プロローグ/白馬八方温泉以前
白馬八方温泉が掘削される100年以上前、細野地区(現在の八方地区)の有志により、古くから知られていた白馬鑓温泉から、竹筒を繋ぎ合わせて二股まで引湯しようという試みが行われました。1876年(明治9年)7月に、標高2,100mの源泉地より工事が始まり、11月8日に積雪により中断されました。下山直前大雪崩が発生し、工事現場や宿舎を襲い、細野住民6人を含む21人が犠牲となり工事は中止となりました。
白馬八方温泉の歴史
1970年代後半、スキーや登山などレジャーブームとなり、八方でもかねてからの夢であった温泉開発が、八方尾根観光協会により進められました。
調査や諸手続きを経て、白馬鑓ヶ岳直下の南股川右岸標高960mの地点で1982年(昭和57年)5月に掘削が開始され、翌年10月に2本の井戸から温泉湧出に成功しました。湧出当時は温浴設備もなく、流量測定用の桶で入浴している記録も残っています。
1985年(昭和60年)11月、温泉事業を行うために八方尾根観光協会より地元のスキー場経営企業の八方尾根開発㈱に権利を移譲し、1986年(昭和61年)7月に源泉より1856m引湯し、二股に「おびなたの湯」を、同年12月にさらに3km引湯し八方に「第一郷の湯」(※現在の八方の湯)を開業しました。その後1988年12月に八方宿泊街に「第二郷の湯」を、八方口に「みみずくの湯」を開業しました。
宿泊施設への給湯を望む声が高まり、1992年(平成4年)6月に第3号井の湧出に成功し、翌年11月に5ブロックに分けて約100戸に温泉の給湯が開始され、有数の温泉地となりました。
その後、2003年(平成15年)には「薬師の湯」「和みの湯」の2つの足湯や「みみずくの湯」の露天風呂の増築を行いました。
温泉施設の開発から30年を経て、逐次改修や改装を行っておりますが、施設のキャパシティ不足の解消のため、中心地にある「第一郷の湯」を閉鎖し、跡地に2014年11月旗艦店「八方の湯」を新設しています。この年の8月にはスキー場内の北尾根高原に「北尾根の湯」も開業しています。
新たな展開
白馬八方温泉は、肌の表面の汚れや古い角質を落とす効果のあるpH11を超える強アルカリ性の湯として訴求してきましたが、東京工業大学地球生命研究所らによる調査研究により、タンパク質や水素を含み、極く限られた細菌しか検出されないどの、『生命の起源』を解く研究対象として世界的に注目が集まっています。
更に、日本温泉総合研究所の調査により、目下のところ天然水素水が溶存している日本唯一の温泉であることが判りました。アルカリによる還元性に加え、水素による抗酸化作用が注目されています。
「八方の湯」露天風呂で50~60ppbの水素濃度があります。飲泉口で240ppbのより高濃度の「おびなたの湯」では、その温泉の新湯をより触れられるように「壺湯」「打たせ湯」を整備し、飲泉設備も再整備しました。
白馬八方尾根の年表
昭和57年5月 | 八方尾根観光協会が施主となり、松本さくせん工業が白馬国有林 |
222ち地籍において温泉掘削工事を開始 | |
昭和58年10月 | 源泉1号、源泉2号掘削、温泉湧出に成功 |
源泉1号井 深度561m、毎分328リットル 温度 50.6度 | |
源泉2号井 深度600m、毎分216リットル 温度 48度 | |
昭和60年11月 | 八方尾根観光協会より八方尾根開発株式会社へ温泉開発事業を移譲 |
昭和61年7月 | 南股源泉部より1,856m引湯し、二股に「おびなたの湯」を開業 |
昭和61年12月 | 八方地区まで約3km引湯し、「第一郷の湯」を開業 |
昭和63年12月 | 八方口地区まで引湯し八方に「第二郷の湯」八方口に「みみずくの湯」開業 |
平成4年6月 | 源泉3号井を掘削、湧出に成功 |
深度700m、毎分710リットル 温度55度 | |
平成5年 | 5つのブロックに分けた各戸引湯工事を開始、11月完成 |
白馬八方温泉として県内有数の規模の温泉地となる | |
平成12年 | 八方入口に温泉モニュメント完成 |
ニレ池200トン貯湯槽に加え180トン貯湯槽増設 | |
平成14年11月 | 「第一郷の湯」浴室改修 |
平成15年4月 | 八方口、塩の道沿いに「足湯 薬師の湯」完成 |
平成15年11月 | 「みみずくの湯」に露天風呂を増設 |
平成15年12月 | 八方に「足湯 和の湯」完成 |
平成19年7月 | JR白馬駅横、「足湯 白馬駅前の湯」に温泉提供 |
平成25年8月 | 「みみずくの湯」浴室改修 |
平成26年 | 6月に「第一郷の湯」を閉鎖、12月新施設「八方の湯」開業 |